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技術経営(MOT)とは何か~社会実装までの多くの壁を乗り越える

  • 執筆者の写真: 西田 弘幸
    西田 弘幸
  • 2025年8月24日
  • 読了時間: 3分

更新日:2025年8月26日

技術を単独の研究成果としてではなく経営資源として扱う考え方


「MOT(Management of Technology)」とは、言葉のとおり、技術を単なる研究開発の成果としてではなく、経営資源のひとつとして戦略的に活用していく考え方です。科学や工学の知識が社会に役立つには、研究室の中にとどまるのではなく、企業や組織が「どう経営と結びつけるか」という視点が不可欠になります。


 私(西田)が富士フイルムで研究開発の所長として携わっていた医療機器分野を例に考えてみましょう。医療機器の研究開発は、技術者にとって社会貢献が実感でき非常にやりがいがある反面、数多くのハードルを伴います。たとえば内視鏡のような診断機器を開発する場合、光学技術や画像処理技術、材料技術のブレイクスルーが必要なのはもちろんですが、それだけでは不十分です。実際の医療現場で使われるには、患者さんへの安全性、医師が真に期待している診断性能、操作しやすいデザイン、メンテナンスのしやすさ、さらには規制当局の承認といった課題を一つひとつクリアしなければなりません。研究レベルで新しい画像技術を実証できても、それをすぐに市場に届けられるわけではありません。むしろ「技術的に可能であること」と「社会で実際に使えること」の間に横たわる大きな溝をどう埋めるかにこそ、本質的な課題があるのです。

 この経験を通じて痛感したのは、技術は単独で存在しても社会に価値を生み出さないということです。研究成果を単なる技術として終わらせず、経営戦略、規制、現場ニーズと結びつけて初めて、本当に役立つ医療機器が世に出ていきます。まさにここに、MOT(Management of Technology:技術経営)の必然性があります。


富士フイルムの”第二の創業”はMOTそのもの


 こうしたMOTの重要性を象徴する事例が、世の中で良く知られている富士フイルムの「第二の創業」と呼ばれる取り組みです。2000年初頭、写真フィルムの需要が急速に縮小したとき、同社は単に「新しい事業を探す」のではなく、長年培ってきた化学技術・材料技術・画像技術・ナノ加工技術といった技術を棚卸し、再定義し、医療、化粧品、バイオといった新分野に展開しました。技術の強みを見極め、それを社会課題と結びつけるMOTの思想を体現した活動がきっかけになっていました。

 そこには単独の技術を、あるいはそれらの技術を融合させ、多くの商品群に連鎖的に繋げて”事業を継続させる”思想が不可欠です。応用範囲が広く、多くの価値を生み出す源泉となる技術を「コア技術」と呼んで強化のため資源の集中を図りました。一方で、商品の形態にまとめるには関連する技術が一つでも欠けると実現できません。そのため、コア技術以外にも商品固有で必要になる技術は外部の力を借りて商品として高い次元で成立させる。こう考えるとMOTの考え方は何も技術に限った話ではないということをご理解いただけると思います。自身の持つ強みを社会に役立てる価値は何か客観的に評価して、その実装のハードルを乗り越えるポテンシャルを見極める=自身のコアを見つける活動に他ならないからです。

 コア技術を定義し、技術の育成方向を商品群の展開と合わせて検討していく技術ロードマップ/商品ロードマップの策定は当社が最も得意とするサービスの一つです。そして、その前提となるのは社会実装までの”魔の川””死の谷”を乗り越えた多くの商品化プロジェクト経験に基づくサポートです。製造業のお客様に限らず、大学の研究室、技術系のスタートアップなど、技術の種を社会実装することを検討されている皆様のサポートをさせていただきます。


技術・商品ロードマップ
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