アントレプレナーシップ教育の核心は何か
- 2 日前
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アントレプレナーシップ教育という言葉は、近年急速に広がっています。起業家育成、地域課題解決、社会起業、社内起業など、その扱う範囲は多様です。文部科学省の整理でも、起業に限らず「社会に新たな価値を創造する力」を広く涵養することが重視されています。
しかし、数多くの現場で実践を重ねる中で重要だと考えている点は、もう少し手前にあります。
それは、アントレプレナーシップ教育の核心は、アイデア創出や事業計画のスキル以前に、WHY(なぜやるのか)をどう扱うかにあるということです。
WHYは軽視されているわけではない
新規事業の立ち上げにおいて、WHYに時間をかける努力は一般的に行われています。市場調査を行い、顧客の課題を掘り下げ、仮説を検証する。表面的に見ると、WHYは十分に議論されているように見えます。
問題はむしろ、共有された前提が存在する環境にあります。
例えば、
同じ企業文化の中での社内起業
同じ建学の精神のもとでの学校改革
既存組織の延長線上での新規施策
このような場面では、「なぜやるのか」は阿吽の呼吸で進みやすい。
理念やビジョンが共有されているがゆえに、上位の問いは改めて構造的に検討されにくいのです。
共有された前提は、強力です。しかし同時に、疑われにくい。
ここに、WHYが暗黙知のまま進むリスクがあります。
WHYを形式知にするということ
図 課題の構造化
WHYを形式知にするとは、単に言語化することではありません。
それは、
そのWHYは、どのような上位(社会)課題と接続しているのか
そのWHYにつながる無数のWHAT(課題)の中で、必然性があるWHATを選んだか
そのHOW(どうやるか)は、自分たちの強みを活かせるか
といった関係性を、階層構造の中で捉え直すことです。
WHY–WHAT–HOWはピラミッド構造を成しています。上位が曖昧なままでは、下位は振り子のように揺れます。
課題の構造化とは、問いを階層の中に置き、整合性を検証する営みです。これにより、WHATを誤るリスクを下げることができます。
不確実性の中で問いを更新する
しかし、構造化は一度行えば終わるものではありません。不確実な状況では、問いそのものも更新され続けます。
そこで重要になるのが、仮説検証の循環です。
状況を観察し(See)
構造を考え(Think)
仮説を立て(Plan)
行動し検証する(Do)
この循環を回すことで、WHYは理念から仮説へと変わり、学習可能な対象になります。
従来のPDCAが「与えられた課題を改善する」ためのプロセスであるとすれば、この循環は「課題そのものを問い直し続ける」ためのプロセスです。
アントレプレナーシップ教育の核心は、まさにここにあります。
アントレプレナーシップ教育の中核
アントレプレナーシップとは、起業の技術ではありません。
それは、
不確実な状況の中で問いを立て、見える化し、仮説をもって社会と向き合う力
を育てる営みです。
そしてそのために不可欠なのが、
WHYを形式知として扱うための課題の構造化
問いを更新し続けるための仮説検証の循環
です。
共有された前提がある組織ほど、この力は重要になります。理念を持つことと、理念を仮説として扱うことは、異なるからです。
アントレプレナーシップ教育の真価は、アイデアを生み出すことではなく、問いを扱い続ける力を育てることにあります。





